『ワイルドアームズ』シリーズの精神的続編として開発されていたRPG『ARMED FANTASIA: To the End of the Wilderness』の開発中止が明らかになった。『ARMED FANTASIA』の対応プラットフォームはPS5、Xbox Series X、PCに加え、当時未発表だった「次世代Nintendoハード」を予定していた。505 Gamesの親会社Digital Brosが9月24日に公表した6月期の決算資料で、『Directorate: Novitiate』や『Battle Island』続編とともに開発を打ち切ったことを明記している。
『ARMED FANTASIA』は、初代『ワイルドアームズ』などを手掛けた金子彰史氏らが参加し、2022年には『PENNY BLOOD』との共同Kickstarterで約3億7933万円を集めたプロジェクトだ。2026年3月には主要なゲームシステムやシナリオを統合した「Vertical Slice」をパブリッシャーへ提出したと報告されていただけに、完成を待っていた支援者にとっては大きなニュースとなった。
『ARMED FANTASIA』開発中止、Digital Brosが決算資料で公表
Digital Brosによると、『ARMED FANTASIA』『Directorate: Novitiate』『Battle Island』続編について、複数回にわたってゲームプレイの見直しを行ったものの、最終的に開発中止を決定した。判断にあたっては、市場環境の変化、それぞれの商品の将来性、発売までに必要となる追加投資などを総合的に検討したとしている。
これらの開発中止に関連して、Digital Brosは1,760万ユーロの償却を計上している。ただし、これは3作品を合わせた金額であり、『ARMED FANTASIA』単独でどの程度の開発費が投入されていたのかは公表されていない。別途100万ユーロの減損も計上されており、非現金の減損額全体では1,870万ユーロとなる。
『ワイルドアームズ』を生んだスタッフによる“精神的続編”

『ARMED FANTASIA』は、『ワイルドアームズ』シリーズを生み出したスタッフが再び集まり、同シリーズの魅力を現代のRPGとして再構築することを目指していた作品だ。トータルゲームデザイナーとシナリオを金子彰史氏が担当し、キャラクターデザインには佐々木知美氏、音楽にも『ワイルドアームズ』ゆかりのスタッフが参加していた。
西部劇を思わせる世界観とJRPGを組み合わせた「Westernpunk」を掲げ、コマンドバトルには「Cross Order Tactics」と呼ばれる新たな仕組みを採用する予定だった。名前こそ『ワイルドアームズ』ではないものの、かつてシリーズを遊んだ人にとっては、事実上その精神を引き継ぐ新作として期待されていたタイトルだ。

『PENNY BLOOD』との共同Kickstarterで約3億7933万円を調達
本作が大きな注目を集めたきっかけのひとつが、2022年に実施されたKickstarterだった。『シャドウハーツ』の精神的続編を掲げる『PENNY BLOOD』との「Double Kickstarter」としてクラウドファンディングを実施し、1億円の目標に対して1万7920人から3億7932万8385円を集めている。
ここは少し注意が必要で、この約3.8億円は『ARMED FANTASIA』単独で集めた金額ではなく、『PENNY BLOOD』との共同キャンペーン全体の支援額だ。またKickstarterの成功によって、ゲーム完成までに必要なすべての資金が確保されたわけでもない。当初から外部のパブリッシャーや投資家との協力を前提にしたプロジェクトであり、クラウドファンディングは開発費の一部や企画の需要を示す役割も担っていた。
2026年3月には「Vertical Slice」をパブリッシャーへ提出していた
今回の開発中止が重く受け止められている理由のひとつが、少なくとも今年3月までは開発が進んでいると報告されていたことだ。
2026年3月のKickstarterアップデートでは、主要なゲームシステムやメインシナリオなどを統合した「Vertical Slice」を完成させ、パブリッシャーへ提出したことが報告されていた。Vertical Sliceとは、製品版の品質やゲーム全体の方向性を判断するために、代表的な部分を完成形に近い状態まで作り込んだ開発用ビルドを指す。
つまり、企画書だけの段階で中止された作品ではない。ゲームとして主要な要素をまとめた段階まで進み、それをパブリッシャーが評価したうえで、その後の追加投資や市場性を検討した結果、開発継続を見送ったことになる。Digital Brosが「複数回にわたってゲームプレイの見直しを行った」と説明している点からも、開発側とパブリッシャーの間で完成へ向けた調整が続いていたことがうかがえる。
3.8億円集めても完成しない。クラウドファンディングの難しさ
今回のニュースで改めて分かるのは、クラウドファンディングで多額の支援を集めても、それだけでゲームの発売が保証されるわけではないということだ。
とくに『ARMED FANTASIA』のような規模のRPGでは、数年間にわたる人件費、グラフィックやサウンド制作、QA、ローカライズ、マーケティングなど、完成までに多くの追加資金が必要になる。Kickstarterで需要を確認できても、その後パブリッシャーが「さらに投資して発売まで持っていけるか」を判断する段階が残っている。
Digital Brosは今回、新作市場について、ユーザーの時間や支出が既存の人気作品へ集中し、新規タイトルの商業的な成果を予測しづらくなっている状況も説明している。今回の中止が単純な「資金不足」だけで決まったとは言えず、ゲーム内容の見直し、追加投資、市場環境を含めた事業判断だったと見るのが正確だ。
支援者への説明や返金はどうなる?
9月30日時点で、『ARMED FANTASIA』公式サイトやKickstarterには今回の開発中止について新たな公式アップデートは掲載されておらず、プロジェクトページ上の最終更新は2026年3月となっている。Kickstarterのコメント欄では支援者から説明や返金を求める声も出ているが、返金の有無やリワードの扱いについて、制作側から正式な方針はまだ示されていない。
また、『ARMED FANTASIA』と同じKickstarterで資金を集めた『PENNY BLOOD』は、今回Digital Brosが開発中止を発表した3作品には含まれていない。共同キャンペーンだっただけに混同しやすいが、現時点でDigital Brosが中止を明言したのは『ARMED FANTASIA』側となる。
“昔の名作を精神的続編で復活させる”難しさも
近年は、かつて人気だったシリーズのクリエイターが、元作品のIPを使わずに「精神的続編」として新作を作るケースも増えている。Kickstarterは、そうした企画にファン自身が直接資金を出し、昔好きだったゲームの続きを間接的に実現できる仕組みとして大きな期待を集めてきた。
一方で今回の『ARMED FANTASIA』は、ファンから十分な需要が示され、主要システムを統合した開発ビルドまで完成していても、発売までたどり着けなかった。ゲーム制作が大規模化し、完成までに必要な資金も膨らむなか、「昔の名作スタッフが集まり、ファンが支援すれば復活できる」という構図だけでは成立しにくくなっていることも感じさせる。
『ワイルドアームズ』の精神を現代へ受け継ぐ作品として期待されていた『ARMED FANTASIA』。現時点ではDigital Brosによる開発中止が明らかになった段階であり、プロジェクトの権利や完成済みの開発物、Kickstarter支援者への対応が今後どうなるのかは分かっていない。まずは開発チームからの正式な説明が待たれるところだ。



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