RGGスタジオが手掛ける完全新作『STRANGER THAN HEAVEN(ストレンジャー ザン ヘヴン)』。街を歩き、裏社会に関わる男たちのドラマを描き、激しいアクションで敵と戦う。映像だけを見ると、どうしても『龍が如く』や『ジャッジアイズ』を連想する部分がある。
しかも1965年の神室町まで登場するとなれば、「『龍が如く』と同じ世界なのか?」「過去を描いた作品なのか?」と気になるところだろう。結論から言うと、本作は『龍が如く』の前日譚でもスピンオフでもない。開発陣も直接的な物語上のつながりはないと説明しており、『龍が如く』シリーズの知識がなくても遊べる完全新作として制作されている。
ただし、まったく無関係な作品というわけでもない。『龍が如く』を長年作ってきたからこそ生まれたテーマがあり、街づくりやドラマの見せ方にはRGGスタジオらしい部分も残る。その一方で、戦闘や暴力の描き方、ゲームシステムについては「これまでのお約束」を一度リセットして作られているという。では、『STRANGER THAN HEAVEN』は『龍が如く』と何が同じで、何が違うのか。現在明らかになっている情報から整理してみよう。
『龍が如く』の神室町も登場、直接的な関係はあるのか?

『STRANGER THAN HEAVEN』は、1915年から1965年までの50年間を主人公・大東真とともに生きるアクションアドベンチャーだ。舞台は1915年の小倉、1929年の呉、1943年の大阪、1951年の熱海、そして1965年の新宿へと移り変わっていく。
最後にたどり着くのが、『龍が如く』シリーズではおなじみの神室町だ。しかし、これをもって『龍が如く』の過去を描く作品というわけではない。横山昌義氏は、本作と『龍が如く』には直接的なつながりはなく、シリーズの知識も必要ないと説明している。
それでも両作品の間には、制作思想として興味深いつながりがある。横山氏は『龍が如く』を長く作るなかで、「なぜ彼らはこういう生き方をするようになったのか」「極道組織はどう生まれたのか」といったことが気になっていたという。そこから、ひとりの男の人生を50年間追いながら、時代とともに変化する日本の裏社会や娯楽を描く企画へつながっていった。つまり『龍が如く』の物語を補完する作品ではないが、『龍が如く』を20年以上作り続けてきたスタジオだからこそ生まれた新作、と考えると分かりやすい。
主人公を演じる城田優、『龍が如く』以上に国際色豊か

主人公の大東真を演じるのは城田優。アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、幼少期をサンフランシスコで過ごした大東が日本へ渡り、自分の「居場所」を探しながら50年間を生きていく。
もうひとりの主要人物・真城優をディーン・フジオカが演じるほか、Snoop Dogg、Tori Kelly、大塚明夫、西岡德馬、Official髭男dismの藤原聡、Ado、本宮泰風、黒田崇矢など、ゲームのキャストとしてはかなり異色の顔ぶれが並ぶ。
さらに故・菅原文太が岩木源造役として登場する。遺族の了承を得たうえで、東映から提供された当時の映像や写真をもとにCGモデルが制作され、声は宇梶剛士が担当する。そのほかTupac Shakurも特別出演しており、日本の芸能史や裏社会だけに閉じず、アメリカ文化や音楽まで含めた作品になっていることがキャスティングからも見えてくる。
『龍が如く』シリーズでも実在の俳優や著名人を起用することは珍しくなかったが、『STRANGER THAN HEAVEN』ではその範囲がかなり広がっている。
表現の違い、包丁も刀も「本当に危険なもの」として描く

映像を見ていて、『龍が如く』や『ジャッジアイズ』と特に違うと感じるのが戦闘だ。
『龍が如く』も決して穏やかなゲームではない。自転車や看板で敵を殴ったり、派手なヒートアクションを決めたりと、かなり激しい戦闘が繰り広げられる。しかし、どこか漫画的な爽快感があり、「喧嘩」の延長として受け取れる表現でもあった。
『STRANGER THAN HEAVEN』では印象がかなり違う。大東が刃物を相手に突き立てる場面など、暴力が直接的で生々しい。公式もコンバットを「最も自由で、最も直感的で、最も極限の暴力」と表現し、包丁、ハンマー、刀などを武器として使用できることを明らかにしている。

これは単に残虐表現を増やしたわけではないようだ。横山氏によれば、人間が実際に殴れる速度を意識してモーションを作り、打撃音も骨同士がぶつかるような鈍い音を狙っている。刃物についても、身体に当たった瞬間の感触まで意識しており、「やられる前にやるしかない」時代の怖さを戦闘から感じてもらうことを重視しているという。
だからPVを見て「普通に刺してるけど、もはや殺人鬼じゃないか」と思ってしまうほどなのだが、大東を単純な殺人狂として描こうとしているわけではない。暴力が現代よりはるかに命へ直結しやすかった時代を、ゲームの手触りそのものから感じさせようとしているようだ。
『仁義なき戦い』を意識した世界観。東映との正式コラボも
この生々しい暴力表現を見ていると、個人的には『仁義なき戦い』の世界を連想する。
実際、それはまったく的外れな印象でもない。1929年に大東が極道組織へ関わっていく舞台として呉が選ばれた理由について、横山氏自身が『仁義なき戦い』の舞台として有名な土地であり、組織をめぐるドラマを描くうえで自然に決まったと話している。
さらに東京ゲームショー2026(TGS2026)では東映との正式なコラボレーションも発表された。ゲーム内の映画館には東映作品の映像やポスターが登場し、『STRANGER THAN HEAVEN』と『仁義なき戦い』のコラボグッズも制作。B2ポスターは『仁義なき戦い』シリーズの実在ポスターの構図をオマージュしたものになっている。

もちろん、開発側が「戦闘の残虐表現は『仁義なき戦い』を参考にした」と明言しているわけではない。ただ、任侠を格好よく描くというより、裏切りや抗争、刃物や銃が命に直結する荒々しい時代を描くという方向性には重なるものを感じる。しかも物語は1929年の呉で終わらない。1943年の大阪、終戦後となる1951年の熱海を経て、1965年の新宿へ向かう。50年間という長い時間のなかで、日本の裏社会がどのように変化していくのかも、本作の見どころになりそうだ。
ゲームシステムも「龍が如くのお約束」を一度リセット
世界観だけでなく、ゲームそのものも『龍が如く』とは別物にしようとしている。開発陣は『STRANGER THAN HEAVEN』を制作するにあたり、『龍が如く』で当たり前になっていたシステムを一度すべてリセットしたと説明している。バトルだけでなく、ミニマップの位置、メニュー、サブストーリー、ミニミッション、プレイスポットに至るまで、「このゲームに本当に必要なのか」というところから見直したという。
戦闘では大東の左半身と右半身をそれぞれ操作し、パンチ、防御、組み技などを組み合わせる。攻撃を受けている途中でも反撃できるような設計も採り入れられており、『龍が如く』経験者がそのまま同じ感覚で操作できるようには作っていない。
プレイスポットも『龍が如く』のように大量に用意するのではなく、その時代に存在していた娯楽と大東の人生に必要なものへ絞られている。その一方で、ショービジネスという大きなサイド要素があり、大東自身が歌うだけでなく、興行師として歌手を育てたり、音楽に関わったりしていく。
「龍が如くっぽい世界を別の時代に置き換えたゲーム」ではなく、物語に合わせてゲームの構造から作り直そうとしていることは、かなり強く意識されているようだ。
“いつものRGGスタジオの手触り”から脱却できるか
ここからは個人的に気になっているところだ。
『龍が如く』や『ジャッジアイズ』は、映画やドラマを見るような濃いストーリーと魅力的な人物が大きな魅力だと思う。一方、シリーズを長く遊んでいると、物語や主人公は変わっても、街を歩き、イベントが始まり、敵と戦い、サブストーリーをこなすという流れや、キャラクターの動き、戦闘のリズムに「またこの感じか」と思うこともある。
悪い意味だけではない。あの独特の操作感やテンポもRGGスタジオ作品らしさではある。ただ、個人的には『龍が如く』や『ジャッジアイズ』を遊ぶたびに、キャラクターの動かし方や戦闘に共通した「このスタジオのゲームだな」という独特の手触りを感じてきた。だからこそ、『STRANGER THAN HEAVEN』で一番気になるのは、舞台や主人公を変えただけでなく、その部分まで本当に変わっているのかということだ。
開発陣自身も、今回は従来のシステムの上で物語だけを変えるのではなく、「このドラマを味わうために最もふさわしいゲームシステムは何か」というところから作り直したと話している。『龍が如く』経験者がこれまでと同じ感覚で遊び始めれば、驚くかもしれないとも説明している。
『STRANGER THAN HEAVEN』が本当に新しいシリーズになるためには、1915年から始まる50年間という設定や、生々しい暴力表現、豪華なキャストだけではなく、実際にコントローラーを握った瞬間にも「これは龍が如くとは違う」と感じられるかが重要になると思う。『龍が如く』を作り続けてきたRGGスタジオだからこそ生まれた作品でありながら、その「いつもの手触り」からどこまで離れられるのか。個人的には、そこが『STRANGER THAN HEAVEN』で最も楽しみにしている部分だ。



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