Paramount Skydanceは2026年10月6日、Warner Bros. Discovery(WBD)の買収を完了した。統合後の会社名は「Skydance」となり、Paramount PicturesとWarner Bros.という映画スタジオだけでなく、HBO、CBS、CNN、Nickelodeon、Paramount+、HBO Maxなどを同じグループに抱える巨大なエンターテインメント企業が誕生した。
ゲーム事業も今回の再編に含まれる。海外報道では、2026年6月に発足したParamount Games StudioとWarner Bros. Gamesの開発・体験部門を、Paramount Games Studioを率いてきたTony Driscoll氏の下で一本化すると伝えられている。Warner側にはAvalanche Software、NetherRealm Studios、Rocksteady Studios、TT Games、WB Games Montréal、WB Games Bostonなどがあり、『ホグワーツ・レガシー』『モータルコンバット』『バットマン:アーカム』を生み出してきた開発体制が、Paramount側のゲーム戦略と同じグループに入ることになる。
日本のユーザーからすると、「パラマウントがワーナーを買収した」と聞いても、ゲームにどこまで関係するのかは分かりにくい。そこで、Warner Bros. GamesがどんなIPとスタジオを抱えているのか、設立されたばかりのParamount Games Studioには何があるのか、そして現在動いているWarner側のプロジェクトにどんな影響が考えられるのかを整理してみる。
買収でWarner Bros. GamesもSkydance傘下へ
Skydanceが10月6日に発表した買収完了のリリースでは、ParamountとWBDをひとつの企業へまとめ、映画、テレビ、ストリーミング、スポーツ、商品や体験まで含む統合企業として運営する方針が示された。会社全体では3年以内に少なくとも60億ドル規模のシナジーを目指しており、重複する機能の整理や事業統合も今後進められる。
ゲームについて、買収完了リリースそのものには細かな組織図まで書かれていない。一方、Niche GamerがVarietyの報道をもとに伝えた内容では、Warner Bros. GamesとParamount側のゲーム・体験事業をTony Driscoll氏の指揮下へまとめるという。したがって、「Warner Bros. Gamesというブランドがすぐ消える」という話ではないが、投資判断やフランチャイズ戦略の大枠は新しいSkydanceの方針に沿っていくことになる。
Warner Bros. GamesにはどんなIPがある?
Warner Bros. Gamesの強みは、単に有名キャラクターを多く持っていることではない。大規模な家庭用ゲームを実際に作ってきた内部スタジオと、長年ゲーム展開してきたフランチャイズの両方を持っている。
代表的なのが『ハリー・ポッター』の世界を使った『ホグワーツ・レガシー』だ。Avalanche Softwareが開発したオープンワールドRPGで、Warnerのゲーム事業を代表する大型作品になった。2026年8月のWBD株主向け資料では、ゲーム事業のパイプラインとして「『ホグワーツ・レガシー』の第2作」が明記されており、続編そのものは正式に存在が確認されている。

DCでは、Rocksteady Studiosの『バットマン:アーカム』シリーズ、WB Games Montréalの『ゴッサム・ナイツ』『バットマン:アーカム・ビギンズ』、NetherRealm Studiosの『インジャスティス』などがある。NetherRealmは『モータルコンバット』の開発元でもあり、格闘ゲームというWarnerの映像IPとは別軸の大きなゲームブランドも抱える。

そのほか『ゲーム・オブ・スローンズ』のスマートフォンゲーム、TT Gamesによる長年のLEGOゲームなどもWarner Bros. Gamesの事業に含まれる。『マトリックス』や『ロード・オブ・ザ・リング』などWarnerと関係の深い作品もゲーム化されてきたが、LEGOを含め、すべての原作IPをWarnerが単独所有しているわけではない。ここでは「Warner Bros. Gamesがゲーム展開してきた代表的なブランド」と考えるのが正確だ。
開発スタジオも強い。Rocksteady、NetherRealm、TT Gamesが残る
現在のWarner Bros. Games公式採用ページには、Avalanche Software、NetherRealm Studios、Rocksteady Studios、TT Games、WB Games Montréal、WB Games Boston、WB Games New York、WB Games San Franciscoなどが掲載されている。2025年にはMonolith Productionsなど複数スタジオの閉鎖があったが、中核となる開発拠点は現在も残っている。
Avalanche Softwareは『ホグワーツ・レガシー』、Rocksteady Studiosは『バットマン:アーカム』、NetherRealm Studiosは『モータルコンバット』『インジャスティス』、TT GamesはLEGO作品を中心に実績を積んできた。今回の買収でSkydanceが手にしたのは有名IPだけでなく、これらのゲームを内部で作れる制作組織でもある。

Paramount Games Studioは2026年6月にできたばかり
一方、Warner Bros. Gamesを受け入れる側のParamount Games Studioは、2026年6月に発足したばかりの新しいゲーム部門だ。ただし、ゲーム経験までゼロから始める会社ではない。
ParamountはSkydance Games、Skydance Interactive、Skydance New Mediaを同じゲーム部門へまとめ、開発、パブリッシング、ライセンス、フランチャイズ展開をひとつの戦略で運営する体制を作った。その責任者がTony Driscoll氏で、Epic Games、Warner Bros.、Disneyなどでの経験を持つ。
Paramount Gamesの公式サイトを見ると、Paramount側には『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ(TMNT)』『アバター 伝説の少年アン』『スポンジ・ボブ』『スター・トレック』など、ゲームへ展開しやすいブランドが並んでいる。2026年にはプラチナゲームズ開発の『TMNT:ザ・ラスト・ローニン』を発表し、『アバター・レジェンズ:ザ・ファイティング・ゲーム』も展開した。

Skydance側にはゲーム開発の実績もある
Paramount Games Studioのもうひとつの土台がSkydanceだ。Skydance InteractiveはVRゲーム『The Walking Dead: Saints & Sinners』を手掛け、Skydanceは2022年時点で同作が6000万ドル以上の売上を記録したと発表している。さらにVRアクション『Skydance’s BEHEMOTH』も開発した。
Skydance New Mediaでは、『アンチャーテッド』シリーズで知られるAmy Hennig氏がゲーム制作を率いている。現在はMarvel Gamesと共同で『Marvel 1943: Rise of Hydra』を開発し、Lucasfilm Gamesとの『スター・ウォーズ』新作も進行中だ。これらはParamountが所有するIPではなく、外部の大手権利者と組んで大型ゲームを開発してきた実績という位置付けになる。
Skydance New Mediaの作風を知るには、『Marvel 1943: Rise of Hydra』の公式トレーラーが分かりやすい。
パラマウント流になると、Warnerのゲームはどう変わる?
ここは現時点で「こう変わる」と断定できる段階ではない。買収完了後に、Warner側の個別ゲームについて開発中止や方向転換が発表されたわけでもないからだ。
ただし、Paramount Games Studioが設立時に掲げた考え方は明確だ。同社はゲームを映画やテレビの付属物ではなく、映画、テレビ、ストリーミングと並ぶ「コンテンツ戦略の中核」と位置付けている。また、単発のゲームを発売するだけでなく、ひとつのゲームから長期的なコミュニティやフランチャイズを育てる方針も示している。
この考え方は『ハリー・ポッター』、DC、『ゲーム・オブ・スローンズ』のようなWarner側の大型IPと相性がいい。映画やドラマの公開時だけゲームを出すのではなく、ゲームそのものを継続的なファン接点として扱いやすいからだ。Tony Driscoll氏はFortniteやRobloxのようなクリエイター経済にも関心を示しており、将来的にはUGCやライブイベントを含め、IPの使い方が従来より広がる可能性もある。
一方で、会社全体では60億ドル規模のシナジー目標が掲げられている。ゲームでも開発ラインや人員、マーケティング、ライセンス戦略の見直しが行われる可能性はある。重要なのは、「パラマウント傘下になったからゲーム内容が突然変わる」というより、どのIPに長期投資するか、どのプロジェクトを優先するかという経営判断が、新しいSkydanceのゲーム戦略に合わせて整理されていく点だろう。
現在開発中と確認できるWarnerのタイトルは?
買収直後の10月8日時点で、Warner側の将来ラインナップは意外と多く公開されていない。公表ベースで明確なのは、『ホグワーツ・レガシー』の第2作だ。WBDは2026年8月の株主向け資料で、ゲーム事業の今後のパイプラインとして同作を明記した。ただし正式タイトル、発売日、対応機種、開発スタジオはまだ発表されていない。
NetherRealm Studiosについては、Warnerの公式採用ページが現在も『モータルコンバット』と『インジャスティス』のフランチャイズを成長させていく方針を示しているが、次の家庭用タイトルは正式発表されていない。WB Games MontréalもDCユニバースをゲームで広げるスタジオとして存続しているものの、次回作のタイトルは明らかになっていない。
Rocksteady Studios、TT Gamesなどもスタジオ自体はWarner Bros. Gamesの現行組織として残っている。つまり、買収によってすでに大量の新作が公表されたわけではなく、むしろ『ホグワーツ・レガシー』続編以外は「スタジオは動いているが、次のタイトルは未発表」という状態が多い。
WarnerのIPとParamountのゲーム戦略が同じ会社に入った意味
今回の買収でゲーム分野に起きた最大の変化は、IPの数が増えたことだけではない。『ハリー・ポッター』、DC、『モータルコンバット』『ゲーム・オブ・スローンズ』を扱ってきたWarner Bros. Gamesの内部開発力と、『TMNT』『アバター』『スポンジ・ボブ』『スター・トレック』などを持つParamount側のIP、さらに外部IPとの大型共同開発を進めてきたSkydance Gamesのノウハウが、同じ企業グループに入ったことだ。
Paramount Games Studioが正式に発足したのは2026年6月。そのわずか4カ月後にWarner Bros. Gamesまで同じSkydance傘下へ入ることになった。ゲーム事業としては、組織を作った直後に一気に規模が拡大した形になる。
現時点では『ホグワーツ・レガシー』続編を含む既存プロジェクトの中止や大幅な方針変更は発表されていない。だからこそ次に注目したいのは、新しいSkydanceが最初にどのゲームを発表するのかだろう。Warnerの大型IPを従来通り育てるのか、Paramount側のフランチャイズ戦略と組み合わせて新しい展開を始めるのか。今回の買収は、映画業界だけでなくゲームの勢力図にも長く影響する再編になりそうだ。


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