海外PCゲームでは長く支持されてきた一方、日本の家庭用ゲームユーザーにはあまり馴染みがない。そんな少し変わったドライブシミュレーター『BeamNG.drive』が、ついにPS5へやってくる。
開発元のBeamNGは2026年9月24日、PS5版『BeamNG.drive』を10月19日に発売すると発表した。PC版は2015年5月から11年以上にわたって早期アクセスが続いており、今回が初めての家庭用ゲーム機への展開となる。PS5版も早期アクセスとしてスタートし、PC版ではほぼ同じ時期にVer.0.40の配信が予定されている。
日本ではタイトルを今回初めて知った人も少なくないだろう。しかしSteamでは9月25日時点で全言語のレビューが約42万件、Steam購入者に限定しても約39万件に達し、評価は「圧倒的に好評」。一方、日本語レビューは600件に満たず、海外での規模と国内での認知度にはかなり差がある。
では、11年以上も正式版になっていないゲームが、なぜこれほど長く遊ばれているのか。『グランツーリスモ』のような一般的なカーシミュレーターを想像すると、少し違うゲームが見えてくる。
10月19日にPS5へ、11年以上続くPCゲームが家庭用進出

『BeamNG.drive』は、ドイツのBeamNGが開発する車両シミュレーターだ。PC版は2015年5月29日にSteamで早期アクセスを開始し、その後も数カ月おきにアップデートを重ねながら開発が続けられてきた。2026年7月にはグラフィックやUIを大幅に刷新するVer.0.39が公開され、PS5版の登場に合わせるように次のVer.0.40も予定されている。
開発元のCEOであるThomas Fischer氏によれば、ユーザーから「いつコンソール版が出るのか」という質問を10年近く受け続けてきたという。PCで巨大なコミュニティを築きながら家庭用ゲーム機には展開してこなかったため、今回のPS5版は本作にとってかなり大きな節目になる。
ただし、PS5版も完成版として発売されるわけではない。PC版と同じように開発が継続される早期アクセスとしてスタートするため、10月19日が『BeamNG.drive』の完成日という意味ではない。11年以上早期アクセスが続いていること自体、一般的なゲームとはかなり変わった歩み方をしている。
グランツーリスモと違う。“車“をシミュレーションするゲーム

「リアルな車両シミュレーター」と聞けば、『グランツーリスモ』のような作品を思い浮かべるかもしれない。しかし『BeamNG.drive』が目指しているものはかなり違う。
『グランツーリスモ』では実在メーカーのクルマを集め、チューニングし、実在するサーキットなどで速さを競うことが大きな魅力になっている。一方、『BeamNG.drive』の公式車両はGavrilやIbishuといった架空メーカーが中心で、実車を何百台もコレクションするゲームではない。実在サーキットの忠実な再現を売りにしているわけでもない。
代わりに徹底しているのが、「車という機械が実際に存在したらどう動くのか」という部分だ。エンジンやタイヤ、サスペンション、車体などが相互に影響しながら動き、その結果として加速、旋回、悪路走行、故障、クラッシュまでが生まれる。
速く走ることだけが目的ではなく、普通のセダンで街を流したり、オフロード車で岩山を登ったり、トラックで荷物を運んだり、パトカーから逃げたりしてもいい。あるいは意図的に車を壁へ衝突させ、「この速度、この角度ならどう壊れるのか」を眺めることすら遊びになる。レースゲームというより、車を使った巨大な物理サンドボックスと考えたほうが近い。
車がリアルに潰れる、最大の特徴は「ソフトボディ物理演算」
『BeamNG.drive』を象徴するのが、異様なほどリアルに変形する車体だ。YouTubeなどで、車を高速で壁へ激突させたり、巨大な障害物で押し潰したりする映像を見たことがある人もいるかもしれない。
本作では車体をひとつの硬い物体として扱わず、多数の「ノード」とそれらを結ぶ「ビーム」のネットワークとして計算する独自のソフトボディ物理演算を採用している。それぞれが力を受けて曲がり、変形し、限界を超えれば破損する。しかも物理演算は毎秒2000回という頻度で更新されている。
そのため、クラッシュしたときに表示されるのはあらかじめ用意された「壊れた車」のモデルではない。左前を強くぶつければ左側のボディや足回りが変形し、そのダメージによって直進しづらくなることもある。段差へタイヤを強く当てたり、荒れた路面を無理に走ったりした場合も、それまで車へ蓄積されたダメージが走行状態へ反映される。派手に車を壊すためのゲームに見えるが、実際には「物理演算を真面目に行った結果、壊れ方までリアルになった」という順番だ。ここが、クラッシュ表現を売りにした一般的なカーゲームとは少し違う。
カスタマイズも細かい。約1000種類の車両構成を用意
車両カスタマイズも『BeamNG.drive』の大きな遊びのひとつだ。
ベースとなる公式車両は数十台規模だが、それぞれに多数の仕様が用意され、公式は全体で約1000種類の詳細な車両コンフィギュレーションを収録するとしている。スポーツカーやSUV、ミニバン、バス、タクシー、トラック、オフロード車、重機など車種の幅も広い。さらにエンジン、サスペンション、駆動方式、ホイール、タイヤなどを交換でき、車高、タイヤ空気圧、デフ、スタビライザーなど細かな項目まで調整できる。重要なのは、変更した内容が数字だけではなく実際の物理挙動へ反映されることだ。
たとえばオフロードを走りたいなら、タイヤと足回りを変更して車高を上げる。その状態で岩場へ持ち込み、本当に走破できるか試す。高速走行を重視した仕様、ドリフト仕様、荷物を運ぶトラックなど、自分で作った車を実際の環境へ持ち込んで試せるところに、一般的な「性能値を上げるカスタム」とは違う面白さがある。
サーキットを攻略するより、自分で遊び方を見つける
ゲームには12種類の広大なオープンワールド環境が用意され、市街地、高速道路、海岸、山岳地帯、砂漠、工業地帯などを自由に走ることができる。
もちろんレースゲームらしい遊びもあり、タイムトライアルやレース、警察とのチェイス、配送などのミッションが用意されている。キャリアモードでは車を増やしながら進めることもできるが、『BeamNG.drive』の魅力は必ずしも用意された目標をクリアすることだけではない。
フリーロームでは好きな車と場所を選び、交通量を設定して普通にドライブしてもいい。オフロード走破に挑戦してもいいし、大型トラックを狭い場所へ駐車してもいい。重力や環境を変えたり、巨大な物体を車へ落としたりと、物理シミュレーターだからこそ成立する少し馬鹿馬鹿しい実験もできる。
「今日は何をクリアしよう」ではなく、「この車でこれをやったらどうなるんだろう」と自分で遊びを作る。その自由度が、11年以上遊ばれ続けてきた理由のひとつなのだろう。
Steamでは約42万レビュー、日本語レビューは600件未満
『BeamNG.drive』の存在を今回初めて知ったとしても、それほど不思議ではない。
9月25日時点でSteamの全言語レビューは約42万件に達しており、Steam購入者からのレビューだけでも約39万件。「圧倒的に好評」を維持している。英語レビューだけで21万件を超えるほか、ロシア語、ポーランド語、ドイツ語などでも多数のレビューが投稿されている。
一方、日本語レビューは600件未満だ。もちろんレビュー数だけから各国の正確なプレイヤー人口を判断することはできないが、日本語圏と海外との認知度に大きな差があることはうかがえる。
日本では『グランツーリスモ』のような実車中心のカーゲームのほうが馴染み深く、これまで『BeamNG.drive』を遊ぶにはPC環境も必要だった。PS5への進出によって、「海外では有名らしいけど何のゲーム?」という層へ初めて広く届く可能性がある。
PS5版は発売時点でModとVRに非対応
ただし、長年育てられてきたPC版のすべてを、そのままPS5へ持ってくるわけではない。
開発元によれば、10月19日のPS5版発売時点ではVRとModに対応しない。可能な範囲で将来的にプラットフォーム間の機能差を縮める方針だが、Mod対応についても具体的な時期や範囲は明言されていない。
特にPC版ではユーザー制作の車両やマップなどを追加するMod文化が大きく発展してきたため、自由度を最大限求めるのであればPC版の優位性は残る。一方で、PS5版では複雑なPC環境を用意することなく、コントローラーひとつでこの独特な車両シミュレーションへ入れる。
実在車を大量に集めるわけでもなければ、有名サーキットで最速タイムを目指すことだけが目的でもない。「車が走る、曲がる、壊れる」という当たり前の現象を極端なところまでシミュレーションし、その仕組み自体を遊びにしてしまった『BeamNG.drive』。日本ではまだ馴染みの薄いタイトルだけに、PS5版をきっかけに初めて触れる人も増えそうだ。
PS5版『BeamNG.drive』は2026年10月19日、早期アクセスとして発売予定。PC版ではほぼ同時期にVer.0.40の配信も予定されている。


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