【真・三國無双 Origins】レビュー:全面刷新で新時代へ突入した無双シリーズは買いか?

4.0
Playstation

2000年にPlayStation 2で『真・三國無双2』が発売された当時、フィールドの広さや敵兵の数、爽快なアクションに熱中。たいして三国志の知識が無かったにも関わらず、今となってはおおまかなストーリーや登場人物が頭に叩き込まれている。『真・三國無双2』の発売後、シリーズは『真・三國無双8』まで続きく長寿タイトルとなり、さらには派生シリーズとして日本の戦国時代を舞台にした『戦国無双』まで登場した。しかし、長寿とは裏腹にゲームメカニクスや『三国志演義』に基づいたストーリーの繰り返しにより、近年ではやや陳腐化したとの声も少なくない。その中で昨年から注目のタイトルとして期待を集め、大幅にストーリーとゲーム性を刷新した『真・三國無双 Origins』についてレビューする。

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新たな視点から描かれる三国時代

本作は、伝説的な三国時代の始まりを、無名の放浪者――後に“紫鸞(しらん)”というニックネームが付けられる――の視点から描かれる。この放浪者は記憶喪失という設定で、圧政に苦しむ農民を救うために張角と共に黄巾の乱を起こし、その後、劉備や関羽、張飛といった歴史的な人物たちと協力しながら歴史の重要な局面に関与していくという物語だ。

無双シリーズはストーリー性よりもアクション性が重視されがちだが、本作ではプレイヤーキャラクターである放浪者にバックストーリーが与えられており、歴史の一部としての存在感が感じられる。ストーリーは最終的に赤壁の戦いに収束するが、それまでの過程で数多くの戦場や重要人物が登場し、壮大な物語を展開する。特に放浪者が記憶を取り戻しながら自身のアイデンティティと向き合う内面的な葛藤が、新鮮な要素として加わっている。

従来の真・三國無双シリーズは、武将を選んで各々のストーリーを楽しむものであったが、今作はオリジナルの主人公のストーリーに終始しており、今までのように多くの武将を使って楽しむというものではない。ただし、親交の深い武将は、「随行武将」として共に出陣し、一時的に操作は可能となる。

これは、パターン化してしまったことを理由に評判が下がってきてしまったことを受け、真・三國無双の新たな方針転換として、アクションRPGの路線で進めるか今まで通りのアクションゲームとして続編を出すかという議論が交わされたれたよう。その結果、開発元のオメガフォースは2つの案を融合させ、今作の新たなシステムが出来上がったという。

そのため、単純にストーリーを進めるだけというものではなく、どの陣営に味方するかといった選択肢もあり、RPG要素も高められている。また、後述する新たな戦闘アクションもアクションRPGに近づいた様子が伺える。

それぞれの武将を使い込み、各々のストーリーを楽しむのも最初は新鮮で魅力的だったが、今作のような番外編的視点で進むストーリー性も非常に魅力的で受け入れやすいと感じた。

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レイトレーシングで生まれ変わった戦場とキャラクターデザイン

『真・三國無双 Origins』は、現世代のコンソール向けに最適化された美しいグラフィックとなっている。シリーズで初めてレイトレーシングが採用され、光の屈折や炎、煙、水面などの表現が飛躍的に向上したことで、戦場の臨場感がこれまで以上に高まっている。特に雨の降る戦場や夕日の中での戦闘は視覚的に圧巻であり、アートディレクションが細部まで緻密に計算されていることが伺える。

さらに、キャラクターデザインも刷新されており、歴史上の武将たちが個性豊かに描かれている。真・三國無双シリーズをプレイしてきた人からすれば武将の容姿がパッと思い描けるだろう。今作は面影を残しつつも年齢を変えてみたり、細部に変更を加えたりとなんとなく各武将の雰囲気が変わっている。

思い返せば、全く異なるタッチのキャラクターに刷新してしまった『戦国無双5』は非常に評判が悪かった。今作に関してはこのようなことがなく、単純により美しいビジュアルに変わったという印象だ。関羽は若くなり、綺麗なジャイアン化した感が否めないが、これはこれでありかなという気もする。

主人公については、キャラメイクというシステムはなく、容姿は固定化されている。最初は剣のみ使うことができるが、進めていくことで最終的には10種類の武器を使用することが可能になる。主人公の容姿は固定化されているものの、装備の選択によって武器の容姿は変化し、そのデザインが戦闘中にもリアルタイムで反映される点が没入感を高めている。

また、ストーリーのカットシーンの演出も映画的な手法が多く採用されており、ストーリーに没頭できる工夫がみられる。

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パリーや熟練度システムで深みを増した無双バトル

『真・三國無双 Origins』の戦闘は、これまでのシリーズと比較して大幅に刷新された重要なポイントだ。敵の軍勢をなぎ倒す爽快感はそのままに、一方的に攻めて暴れるだけではなく、新たにパリィシステム(ジャストガード)を導入。敵の攻撃を正確なタイミングでガードすることで、反撃のチャンスを作り出すことが可能になった。ただし、敵武将が使用する強攻撃(身体が赤く光る)は、パリィで防ぐことはできない。

これまで通り大勢の敵兵に対する爽快感はそのままであるが、強敵となる武将との一戦はより慎重にならざるを得ないものへと変わっている。これは、死にゲーと呼ばれるデモンズソウルや仁王、エルデンリングのような戦闘と似ており、アクションRPGのやりこみ感が良いバランスで取り入れられている。

さらに、敵AIの進化も顕著である。特に将軍やボスはより賢明な戦略を取るようになり、プレイヤーの動きを観察して攻撃パターンを変えるため、戦闘に緊張感が生まれている。真・三國無双シリーズでは、“強い敵=攻撃力とHPが高い”というごく単純なものでリアル性に欠ける部分があったが、今作は戦闘技術による強敵が存在し、単純に主人公のステータスを上げるだけでなく、テクニックも必要となってくるだろう。

また、主人公を育成する場面でもRPGの要素が感じられる。各武器に熟練度システムが導入されており、武器を使用する回数によって武器ランクが上がっていく仕組みだ。武器ランクを上げることで攻撃力の上昇や新たな技・モーションを習得することが可能だ。なお、熟練度はキャラクターのレベル(境地レベル)とも連動しており、各武器の熟練度の合計が境地レベルに反映されるといったもの。このため、プレイヤーは剣、槍、手甲、朴刀、棍など、お馴染みの10種類の武器を使用し、さまざまな武器を試しながら主人公のレベルを上げていく必要がある。特に手甲のスタンス切り替えや攻撃タイミングなど、特殊な使い方をする武器もあり、新鮮さを与えている。中でも真・三國無双シリーズで使いやすさで定評のある偃月刀(関羽が使用する長刀)は今作でも使いやすく、強力な武器だった。

全体的な戦闘シーンでは、戦闘の規模感も一層向上しており、丘の斜面を駆け下りて城を守る大軍を相手にする場面や、画面全体を埋め尽くすほどの敵軍との対峙は圧巻である。一方で、将軍やボスとの戦闘では高度な戦術が求められ、シリーズ初期のシンプルなアクションとは異なる奥深さが垣間見えた。

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戦闘を盛り上げる音楽と緻密な環境音

本作の音楽は、シリーズ伝統の中国風ロックを継承しつつ、オーケストラサウンドを取り入れた壮大なものとなっている。特にボス戦では緊張感を煽るダイナミックな音楽が特徴であり、プレイヤーのアドレナリンを刺激する。さらに、環境音もリアルに再現されており、戦場の喧騒や剣が交わる音など、細部にまでこだわりが見られる。一方、一部の曲が繰り返し流れる場面があり、少々単調に感じる部分もあると指摘されているが、それでも全体的な音響設計はシリーズ最高レベルとの評価が多い。

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広大なマップで広がる冒険とサイドクエスト

本作にはオーバーワールドマップが導入されており、探索や収集、サイドクエストが可能となっている。各地にいる侵略者との戦いや、平和を高めるためのミッションなど、多岐にわたる活動がプレイヤーを待ち受けている。しかし、マップ上で特定のキャラクターやサイドクエストを見つける方法が明確ではなく、移動に時間がかかり煩わしさを感じる。この点は改善の余地があると言える。オーバーワールドは自由度が高く、特定の地域でプレイヤーが自ら選択して行動できる点が魅力的である一方、ファストトラベル機能が制限されているためにテンポを損ねてしまっている。

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協力プレイとランキング機能で遊びの幅が広がる

『真・三國無双 Origins』は、真・三國無双8に引き続きオンライン協力プレイを導入。友人と一緒に広大な戦場を駆け巡る楽しさを提供している。プレイヤー同士が協力して巨大な敵軍を撃破する戦略性や、役割分担の重要性が強調されており、ソロプレイとはまた異なる体験が得られる。

さらには、ランキング機能が追加されており、ミッションごとのクリアタイムやスコアを競うことができる。この機能は、上級プレイヤーにとってリプレイ性を高める要素としてゲーム性を高めている。なお、オンラインマッチングは迅速かつ安定しており、ストレスフリーでつなぐことができた。

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挑戦的な難易度とやり込み要素で飽きのこないゲーム体験

メインストーリーをクリアすると、「無双に挑む者」という最難関の難易度がアンロックされる。このモードでは新たなアイテムや武器が獲得可能であり、挑戦的なゲームプレイが楽しめる。ただし、推奨レベルと実際のレベルの差が大きい場合があり、進行が困難になる場合もある。サイドクエストなどで経験値を稼ぐことが可能だが、全体的なバランス調整には課題が残る。それほどまでに難しいモードとなっているが、高難易度をクリアした際の達成感がシリーズの他作品と比較しても非常に高く、やり込み要素は非常に評価できる部分だ。

そのほか、ストーリークリア後には複数のエンディングを解放することや、レアな装備品や馬を獲得する。主人公のレベルを上げるといったやり込み要素がいくつか用意されている。

良い点

  • パリーシステムの導入による戦闘の奥深さ
  • 武器の多様性と熟練度システムによる成長要素
  • オーバーワールドの探索と多彩なサイドクエスト
  • 戦闘の規模感と迫力
  • 新規プレイヤーにも分かりやすいストーリーテリング
  • グラフィックとアートスタイルの進化、レイトレーシングの採用
  • 音楽・サウンドデザインの質の高さ
  • オンライン協力プレイとランキング機能によるリプレイ性の向上

悪い点

  • オープンワールドでの移動や探索の煩わしさ
  • 推奨レベルと実際のレベルのバランス調整の課題
  • 一部のサウンドトラックが繰り返し流れ、単調に感じる場面がある
  • サイドクエストや特定キャラクターの発見方法が不明確な点