不満噴出からわずか2週間で異例の緊急対応
バンダイナムコエンターテインメントは2025年4月15日、『鉄拳8』の緊急バランス調整パッチ「Ver.2.00.02」を4月17日に配信すると発表した。これは、4月1日に実施されたSeason 2の大規模アップデート「Ver.2.00.01」に対するユーザーの強烈な反発を受けたものだ。
Steam上では「圧倒的に不評」の評価が並び、一部プロプレイヤーのボイコットの動きも見られた。バランスの偏り、過剰な攻撃性能、一撃で勝敗が決まるような火力インフレなど、数々の問題が浮き彫りになっていた。
2025年4月1日に配信された『鉄拳8』Season 2アップデート「Ver.2.00.01」は、当初こそ新技追加やキャラクター性能の強化などが注目を集めたが、直後からプレイヤーの間で不満が噴出した。
主な批判点は以下の3つ:
- コンボ火力が高すぎて、一度の読み合いで勝敗が決まる
- 攻撃偏重で守備が成立しづらいバランス
- ヒートシステムによる“攻め得”状態の加速
こうした声を受けて、バンダイナムコは緊急パッチ「Ver.2.00.02」を4月17日に配信すると発表。これは、異例のスピード対応であり、ユーザーの反発を重く見た結果といえる。
全キャラの体力値を引き上げ──“ワンコン即死”からの脱却を狙う
今回のパッチでまず注目すべきは、全キャラクターの体力最大値が増加する点だ。これまでのSeason 2環境では、空中コンボやヒートシステムを活用した連携で、1回の読み合いで7〜8割、場合によっては即死レベルのダメージが出る状況が発生していた。
その結果、実力差ではなく「先に触った方が勝つ」ゲーム展開が目立ち、“鉄拳らしさ”が失われているという声が強かった。今回の体力引き上げは、こうした「一方的な決着」への対策であり、試合展開に持続性と深さを取り戻す意図がある。
“ノーリスク・ハイリターン”技の段階的弱体化がスタート
続いて重要なのが、一部のリスクに対して見返りが大きすぎる技のバランス調整だ。
今回のVer.2.00.02では、以下のような調整が施される:
- 有利状況を何度も作れる技の硬直差や発生を調整
- ヒート中の攻撃が無条件で大ダメージにつながる流れを制限
- 明確な反撃手段がない技に対して、使用リスクを増加
例えば、「当てるだけで有利時間が続く」「しゃがみを強制し、追撃を確定させる」ような技が対象になっており、今後のアップデートでも順次対応が進む予定だ。これはキャラごとの問題ではなく、全体のインフレ傾向への対処という点がポイントである。
ヒートシステムを徹底見直し──攻撃一辺倒から脱却へ
『鉄拳8』のシグネチャー要素である「ヒートシステム」は、キャラクターが一時的に強化される攻撃特化モードだ。しかし、このシステムがSeason 2では過剰に強化され、「ヒートを発動すれば攻撃側が一方的に得をする」状況になっていた。
今回のパッチでは次のような調整が実施される:
- ヒートダッシュ後のコンボ火力を抑制(ダメージ補正の見直し)
- ヒート発動時のフレーム差を調整し、防御側にも対応の余地を確保
- 削りダメージの軽減と、ヒート中の追加削りを無効化
これにより、ヒート状態でのごり押しが難しくなり、プレイヤー間の駆け引きがより機能する形へ修正される。
EVO Japan直前の“炎上”で開発が方針転換
Season 2開始から2週間でこれほど大規模な修正が行われる背景には、プレイヤーコミュニティとプロシーンの大規模な反発がある。とくに、5月9日開催予定の「EVO Japan 2025」に向け、ゲームバランスへの不安が広がっていた。SNSではボイコットの呼びかけも見られ、Steamレビューは「圧倒的に不評」へと変化。
これを受け、鉄拳プロジェクトは「事前に伝えていた調整方針と異なる結果になってしまった」と公式に謝罪し、緊急パッチという形で対応に踏み切った。
5月中旬のVer.2.01でさらなるバランス調整を予定
バンダイナムコは、4月17日のVer.2.00.02に続き、5月中旬にVer.2.01の配信を予定している。このアップデートでは、以下の調整が行われる見通しだ。
- 空中コンボ全体のダメージ減少
- ヒートバースト(発動技)の性能調整
- 削りダメージ量の個別技ごとの見直し
Ver.2.00.02はあくまで「早期に対応可能な課題」への修正であり、本格的なバランスの最適化は今後のアップデートが鍵を握る。
Season 2は本来、“攻めて楽しい”ゲームを目指したものだった。しかし、過度な火力とヒートシステムの暴走によって、攻防のバランスが大きく崩れた。今回のVer.2.00.02は、その暴走を止めるための「リセットボタン」だ。開発陣も反省を表明し、「早急に対応する課題」と「時間をかけて見直すべき課題」に分けて慎重に修正を進めていく方針を示している。
EVO Japanという世界的な舞台を前に、『鉄拳8』は真の意味での“完成形”へと進化できるか。次なるアップデートにも注目が集まる。