植田氏、日銀総裁就任後の金利の行方は?2023為替予想

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Bank of Japan Osaka Branch

FXでは国の政策や方針がダイレクトに影響します。そのため、要人発言や金融政策などの動向からは目が離せません。2月10日、政府は4月8日に任期が切れる日銀の黒田東彦総裁の後任に、植田和男氏を起用する方針を固めました。また、日銀副総裁に内田理事と氷見野前金融庁長官の起用を発表しています。今回は日銀総裁となる植田和男氏と今後の影響について解説します。

黒田総裁の後任は植田和男氏に決定、サプライズで下落

まずはじめに、「日銀総裁」とは、日本銀行の総裁のことを指します。日本銀行は、日本の中央銀行であり、日本の金融政策の中枢を担っています。日本銀行総裁は、日本銀行のトップとして、日本の金融政策を決定するための重要な役割を果たすため、日本銀行法に基づき、日本銀行の運営や金融政策を指導する責任があります。具体的には、金融政策の決定、通貨の発行、金融機関の監督、金融システムの安定を確保することなどが含まれます。

日本銀行の現総裁である黒田総裁は4月8日に任期を終え、後任として植田氏が総裁の有力候補にあがりました。その結果、3月8日には起用の人事案が国会で承認されました。今後の日銀総裁の役割は言ってみればアベノミクスの尻ぬぐいをしなければならず、物価高や過度な円安などによる景気後退中の日本経済の立て直しを任されているわけです。

植田氏が浮上するまでは副総裁である雨宮正佳氏が次期総裁になるであろうと予想されていました。ところが辞退を発表し、予想外にも植田氏が次期日銀総裁の有力候補に挙げられたのです。次期総裁の決定は為替相場にも大きな影響を及ぼします。その総裁の思想が黒田総裁同様に金融緩和政策を継続し、低金利水準を維持していくのか、はたまた海外同様に利上げしていくのか、この思想によって為替相場は大きく動きます。結論から言ってしまえば、金利が上がれば円高に進み、金融緩和が続けば現状維持または円安に動きます。

2月10日、植田氏を起用する方針が発表されたことで、131円60銭付近で推移していたドル円は129円80銭まで一気に下落しました。この要因は、あまりのサプライズ発表だったことに加え、「日銀が新体制のもとで、遠くない将来にいまの大規模な金融緩和策の修正に動くのではないかという思惑が背景にあるとみられる」という憶測が飛び交ったことが大きいとされます。その後、植田氏が「現在の日銀の金融政策は適切、緩和の継続が必要」と、金利の現状維持の意向を示したことで起用発表から約2時間程度で131円40銭程度まで値を戻しました。このように、金融政策や要人発言は為替レートと密接な関係となっているのです。

発言から読み解く植田氏就任後の金利動向の見通し

それでは植田氏はどのような思想の持ち主なのでしょうか?今後の政策をに関わるこれまでの発言をまとめてみましょう。

  • 金融緩和継続の意向(低金利を維持)
    • 「現在の金融政策は副作用をもたらしているが、経済、物価情勢を踏まえると(金融緩和は)必要かつ適切な手法
    • 金融緩和策の効果は副作用を上回るとして、「金融緩和の継続は適切」
  • 金融引き締めの意向(金利上昇を促す)
    • 「物価目標2%の実現が見通せる場合には金融政策の正常化に向かって踏み出せる」
    • 「基調的な物価見通しが一段と改善していく姿になっていけば、正常化方向での見直しを考えざるを得ない」
    • これまで日銀が実施してきた金融緩和の成果をしっかりと継承し、積年の課題であった物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う5年間としたい

上記のように植田氏の発言を抜粋すると、直近は金融緩和を継続していく意向が読み取れ、当面の間は低金利が続くことが予想されます。円安傾向にある為替は、過度な円安にならないように調整しながら維持するといったところ…。ただし、2023年は海外の金利上昇が抑え気味になっていることから、円高に振れることが予想されるので注意が必要です。

植田氏は将来的に金利上昇を目標としており、それには物価目標2%を成し遂げ、安定したうえでの話となります。コミットまでには時間がかかるとも発言しており、総裁の任期となる5年間でこれを成し遂げることを目標に掲げました。よって、任期後半の情勢によっては金利上昇の恐れがあります。ただし、最近は長期金利の上昇幅拡大以降、長期金利が上昇傾向にあります。すべてが日銀総裁の意向で決まるか?というとそうではありません。もちろんその時の情勢に合わせて臨機応変に政策を実行していくわけです。植田氏の発言から長い目で見て金融引き締めを目指していくことが読み取れましたが、発言だけを過信しすぎずに海外の金利動向などにも目を向けて今後の予想を立てていくと良いでしょう。また、現・日銀総裁である黒田総裁は4月8日で任期を終えます。そのため、最後の最後にサプライズ発表があるのではないか?との噂が広がっていましたが、金融緩和を維持すると発表され、サプライズ発表はありませんでした。

今後の植田氏の戦略のストーリーは見えているものの、情勢によって利上げを迫られた時や金融緩和策からの転換期には注意が必要です。